□PROLOGUE
ベトナム戦争は多くのものを奪っていった。
アメリカから正義を。
父から親友を。
母から家族との時間を。
あの忌まわしい戦争で何かを失わなかった人が、一体何人いるというのだろう。
そしてミシシッピ州の明るい8月にも、それは再び暗い影を落としていった。
M氏に勧められて(命令形で)見てみました。
1970年に、ミシシッピ州の家族の元に、負傷した父がベトナムの地から帰ってくる、というのがこの映画の背景。
ベトナム戦争は『フルメタル・ジャケット』や『プラトーン』、『7月4日に生まれて』など、非常に多くの作品で取り上げられていますよね。
それだけ重大な戦争だったのでしょう。
重大で、奇妙な。
宣戦布告すらなく、大義名分もなく、疑心と混乱と恐怖に満ちた戦争。
その人間の心が生み出した凶悪な魔物が、どんなに多くの人の幸せを奪っていったかを描いているのが、『8月のメモワール』。
どこにでもいそうな、一家族の描写が基盤になっているので、こちらとしても感情を追いやすく、映画の世界に入りやすい。
でもその先にあるのは、私たちが経験したことのない戦争の影。
父は後遺症に悩まされながら、なんとか家族を支えている母を助けようと働き口を探します。
しかし、ベトナム帰還兵は国から良い仕事を貰えない。
国からの支援は微々たるもの。
それだけでは到底生活していけない。
国のせいで後遺症になったのに、国の手によって仕事を取り上げられる。
そういう状況がすごくリアルに感じられました。
しかもこの両親が聡明で、子供たちには希望を持たせてやりたい、いい大人になってほしい、と懸命に努力するんです。
ほんとに、こんな両親だったらいい子に育つでしょう。
お姉さんのリディアも、弟のステューもね!
その父を演じるケビン・コスナーの演技も素晴らしいのですが、私が驚いたのは弟のステューを演じるイライジャ・ウッドの演技力。
まだ声変わり前のあどけなさが残るイライジャですが、それがもう迫真の演技!
戦争から帰還した父の言葉によって、成長していく息子の繊細な感情の変化を見事に演じきっています。
感情を爆発させるシーンがとくにすごいと思う。
うちの学校の先生が、『手っ取り早く(しかも楽しく)文化を学ぶ方法は、映画を見ることだ』
と言ってました。
現に本を読んでても文化研究には映画研究がよく出てきたりしますしね。
これはまさに“文化を知りたい”人にうってつけでしょう。
ああもう物書きじゃないから上手く書けないなあ…
M氏!バトンタッチ!
この映画について滔々と語ってくれたまへ。
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